2021/03/16
コラム
借金をする場合、家族など身内の他、消費者金融から借りるという人は多いと思いますが、最近は銀行カードローンで借金をする人も増えています。
銀行からの借入であれば、一見リスクも低く安心できそうですが、実はそうでもありません。銀行カードローンは多額の借入ができるので、つい借りすぎてしまい、その後の返済に苦しむ人が後を絶たず、そのことが今社会問題に発展しています。
今回は、銀行カードローンに潜む落とし穴と、その対処法について詳しく解説します。
1.銀行カードローンについて
銀行カードローンは、銀行が個人向けに行っている無担保小口融資です。
一昔前は、無担保融資は消費者金融の専売特許でしたが、貸金業法の改正によって、消費者金融による多額融資や高金利は禁止され、以前ほどの勢いはなくなりました。
その中で台頭してきたのが、銀行カードローンです。銀行による貸し付けは銀行法に則って行われるので、貸金業法の制限を受けず、自由裁量の余地が大きいことから、利用者を大幅に増やすことに成功しました。
また、その成長の裏には、銀行が大手消費者金融を子会社化して傘下に入れ、キャッシングのノウハウを導入できたという背景もあります。
銀行カードローンは、最寄りのATMやコンビニでもお金を借りられるので、利用者にとっては非常に手軽で便利、大手銀行のブランド力と信頼感も手伝い、借りる側の心理的ハードルも低くなる傾向もあります。
同じお金を借りるなら銀行の方が良い、と感じる人は多く、その他の要素も相まって、銀行カードローンはここ数年で飛躍的な成長を遂げました。
(1) カードローンとキャッシングの違い
カードローンと似た言葉として「キャッシング」があります。この両者の違いを聞かれれば、カードローンは銀行で、キャッシングは消費者金融のもの、と答える人も多いと思いますが、実はこの2つの仕組みは同じです。
確かに、銀行はカードローン、消費者金融はキャッシングという名の融資を行っていることは多いですが、最近では消費者金融もカードローンの名を使うことがあるので、その意味でも特に違いはありません。
銀行カードローンの発足当初は、銀行が自行の口座を持っている人を対象に、毎月その口座から引き落として返済をするシステムをとっており、それがカードローンの特徴とされていました。
しかし、最近では口座不要のカードローンもあり、システム面でもキャッシングとの違いはなくなってきています。
また、キャッシングは返済できなくなると、消費者金融から厳しい取り立てをされるイメージがありますが、現在は銀行カードローンも滞納者に対しては子会社の消費者金融が督促にあたるので、実は滞納後の展開も同じなのです。
金利は全体的に銀行カードローンの方が低めですが、それも会社によってケース・バイ・ケースです。個別に見ればA銀行よりB消費者金融の金利の方が安い、ということはいくらでもあるので、その点でも特筆すべき違いはありません。
(2) 銀行カードローンと消費者金融の違い
カードローンとキャッシングは同じものですが、銀行カードローンと消費者金融には大きな違いがあります。
銀行カードローンは銀行法の規制を受け、消費者金融は貸金業法の規制を受けることは先にも伝えましたが、その中でも最大の焦点は「総量規制」の有無です。
2.総量規制とは?
総量規制とは、個人が借金をする際の総額に制限を設けたものです。
以前から消費者金融による過剰融資・高金利・多重債務は深刻な社会問題になっており、その対策として平成22年に改正貸金業法が施行され、それに伴って総量規制が実施されることになりました。
総量規制では「貸付は原則として年収の3分の1以下」としているので、例えば年収300万円の人に対して、100万円を超える貸付は行えません。
総量規制は合計なので、例えば現在既に年収300万円の人が、A社から50万円借りているとすれば、新たにB社から借り入れをするときは50万円を超える金額を借りることはできません。
(1) 銀行カードローンは総量規制の対象外
上記の総量規制が適用されるのは消費者金融のみで、銀行カードローンはその規制を受けません。よって、銀行カードローンであれば希望額が年収の3分の1以上であっても、審査に通ればお金を貸してもらうことができるのです。
これは高額融資を望む人にとっては有り難い話で、銀行カードローンが高い支持を得ている理由の1つです。
銀行カードローンが規制を受ける銀行法では、明確な貸付上限は定められておらず、貸付は各銀行の任意の基準で決めています。その結果、経済能力を超えた借り入れをする人も多く、最近の調査では、銀行カードローンで借り入れをしている人の約3割が、年収の3分の1以上の額を借り入れていることが判明しました。
(2) 銀行カードローン拡大融資による自己破産の増加
総量規制は多重債務を防ぐためにできた制度で、実施を契機に自己破産者は減少しました。しかし、2016年に入ってから13年ぶりに自己破産件数が増え、多重債務者が増加していることが浮き彫りになったのです。
その原因として、銀行カードローンの拡大融資が指摘されています。実際に2016年末時点の銀行カードローンの貸付残高は5.4兆円を超え、総量規制が導入された2010年と比較しても65%増となっています。
このことは、銀行カードローンが新たな多重債務の温床となっていることを物語っており、日本弁護士連合会では「銀行カードローンも総量規制の対象とすべき」という意見書を公表しています。
3.銀行カードローンの規制強化の動き
こうした流れを受け、全国銀行協会では各銀行がカードローンの宣伝および審査体制を点検し、見直しをすることを申し合わせました。
ただ、現状は一律の規制は難しく、金融庁も静観・注視するに留まっています。
4.どうしても借金が返せないときの対処法
銀行カードローンが社会問題化している中で、今この瞬間にも多額の借金が返せずに苦しんでいる人もいると思います。
今後頑張れば返せる見込みがある!というのであれば、完済を目指すに越したことはありません。しかし、どうしても返せそうになければ借金の整理も検討しましょう。
借金問題を法律的に解決することを債務整理と言い、以下の3つの方法があります。
(1) 任意整理
任意整理は、債権者と債務者の2者で話し合いをして、借金を減額する制度です。任意整理後は原則利息をカットして、以後3年ほどで完済を目指します。
任意整理では取引開始時に遡って金利の引き直し計算をするので、元本も減額されることになります。月々の返済額も生活に支障のない額になるので、手続以前に比べれば支払いは楽になります。
借金額がそれほど大きくなく、継続した収入がある人に適した制度です。
(2) 個人再生
個人再生は自宅を手放すことなく借金を整理できる制度で、借金を5分の1程度まで圧縮できるので、借金額が比較的大きい人に適した制度です。
個人再生後に継続した収入があり、借金を減額すれば返済可能と判断されれば認可される可能性は高いです。
個人再生の情報は官報に掲載されるので、その点はデメリットですが、官報の情報を見ている人は少ないので実害はそれほどありません。
個人再生はマイホームを維持できるのでその点は大きなメリットです。
個人再生認可決定後は原則3年(例外5年)で決められた額を返済していきます。
(3) 自己破産
自己破産は債務整理の最終手段です。自己破産が認められると借金は全て免責され、その後は一切返済する必要がありません。
しかし、自宅や車、一部現金を除いた預貯金などの財産は没収されます。また、官報の掲載や、一部職業制限などもあるので、メリット・デメリット共に大きい制度と言えます。
残したい自宅がある人にはおすすめできませんが、継続した収入がない場合は自己破産を選ぶことになります。
債務整理はいずれの制度を利用しても、ブラックリストには載ることになります。手続後は以後5~10年は新たな借り入れができなくなる点もデメリットです。
しかし、滞納を数か月続ければ、債務整理をせずともブラックリスト入りするので、どのみち新たな借り入れはできません。
その点を考慮すると、返済できず督促におびえるのであれば、債務整理に踏み切るのは決して悪い話ではありません。むしろ精神衛生上・社会生活上のメリットは大きいと言えます。
5.まとめ
銀行カードローンは総量規制の対象外なので、年収の3分の1を超える高額融資も可能です。しかし、最近は銀行カードローンが原因で自己破産に至る人も多く、社会問題化しています。
もし、今その問題に直面していたら、一刻も早く弁護士に相談しましょう。借金問題は対処が遅れると傷口も深くなります。1人で悩まずに専門家と一緒に解決していきましょう。
田中法律事務所は、広島県広島市、東広島市、呉市、廿日市市、三次市、福山市など、広島県全域から多数の債務整理のご相談・ご依頼を承っております。借金問題でお困りの方、債務整理を検討しているという方は、これ以上借金が膨らんでしまわないよう、どうぞお早めにご相談・ご依頼ください。
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