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2020/05/12

コラム

2つのモデルケースで見る自己破産の手続(入門編)

1.自己破産は便利な手続

「破産」あるいは「自己破産」という言葉を知らない人は少ないと思いますが、実際の破産手続の内容については意外に知られていません。言葉のイメージからすると、大変な手続であるとか、手続をすると色々不利なことが起こるとか、マイナスのイメージを持っている人が多いのではないかと思いますが、内容をよく知ってみると、実は弁護士に相談することで、さほど大変なものではなくなり、また借金を抱えている人にとっては便利な手続であることがわかります。


ここでは、この破産手続について、個人が破産する場合の以下の2つの設例をもとに簡単に説明したいと思います。


○設例1

Aさん(21歳、学生)

ゲームに熱中して課金し過ぎてしまい、学生ローンなどから借り入れをしたものの、アルバイト収入だけでは返済が苦しくなり、債務整理を考えている。


○設例2

Bさん(45歳、サラリーマン)

35歳のときに住宅ローンを組んで自宅を購入したものの、3年前にリストラにあって転職せざるを得なくなり、以前よりも大幅に収入が減った。そのため、住宅ローンや生活費のためにカードローンや消費者金融から借り入れをしてやり繰りしていたが、病気のために仕事をすることができなくなって収入もなくなり、返済ができなくなってしまった。なお、Bさんは生命保険に入っており、解約すれば解約返戻金として150万円が入る見込みである。



2.自己破産とは

破産手続は、債務者が抱えている債務を整理するために、破産法という法律に基づいて裁判所で行われる手続です。


「自己」破産という呼び方をされることがありますが、これは債務者が自ら破産の申立をして破産手続を行う場合を指しています(破産法の条文には、「自己破産」という言葉は出てきません)。法律上は、債権者側が債務者の破産の申立を行うこともできますが、実務上は債権者申立による破産手続はあまり多くはなく、ほとんどは債務者自身によって申立が行われています。


この破産手続は、債務者が持っている財産を換価(お金に換えること)して、債務者が抱えている借金などの債務を債権者に対して平等に配当を行うことを本来の目的としています。そして、配当を終えた後に、特に問題がなければ残った債務の支払義務を免除して、債務者を債務負担から解放することになります(「免責」と言います)。


ただ、実際には破産の申立をする時点で債務者には見るべき資産がないことも多く、その場合には債権者に対する配当は行われず、免責の手続のみが行われることになります。


いずれにしても、破産手続を取ることで、債務者は免責により債務の負担から解放されることになりますので、債務者にとっては大変ありがたい制度であるといえるでしょう。



3.破産手続の種類

破産手続には、大きく分けて「管財事件」と「同時廃止事件」の2種類があります。


(1) 管財事件

先ほど述べたとおり、破産手続は債権者に対して債務者の資産を配当することが本来の目的です。破産手続が始まった時点で債務者に資産がある場合には、その資産を売却するなどしてお金に換えた上で、債権者に平等に配当をすることになります。そのため、裁判所は、破産手続を開始する決定をする際に、この換価・配当などの手続を行う破産管財人を選任します(通常は弁護士の中から裁判所が選任します)。


このように、債務者に換価できる資産があって破産管財人が選任される場合を、「管財事件」と呼びます。


設例2のBさんのように、自宅不動産を所有している場合には、この管財事件となることが通常です。また、Bさんには生命保険の解約返戻金150万円もあり、これも潜在的な資産とみなされますので、仮に不動産を所有していなくても管財事件として扱われます。


(2) 同時廃止事件

これに対して、債務者に資産がほとんどない場合には、換価・配当を行おうにも行うことはできませんから、破産管財人を選任してもあまり意味はありません。したがって、そのような場合には、そもそも破産管財人は選任されず、裁判所はいわゆる「同時廃止」の決定を行います。


「同時廃止」とは、破産手続開始と同時に破産手続が終了(廃止)するという意味で、破産手続開始決定(一般にいう破産宣告のことです)は出ても配当などの手続は行われず、すぐに免責に関する審理(債務者を免責してよいかどうかの審理)に入ります。


このように、債務者に資産がほとんどなく、破産管財人が選任されない場合を、「同時廃止事件」と呼びます。


設例1のAさんは学生で資産もないと思われますので、通常はこの同時廃止事件となります。


(3) 管財事件と同時廃止事件の違い

管財事件と同時廃止事件には、いくつかの大きな違いがあります。


まず、管財事件では破産管財人が選任され、その報酬を支払う必要があります。それに備えて、破産の申立をするときに、まとまった金額を裁判所に納める必要があります(これを予納金と言います。金額はケースや裁判所によって異なりますが、最低でも20万円程度は必要です)。


これに対して、同時廃止事件の場合には破産管財人は選任されませんので、このような予納金は必要なく、少額の手続費用のみを納めれば済みます。


次に、管財事件では、債務者の資産を処分するなどして換価し、これを債権者に配当することになりますので、事件の終結までにはある程度の時間が掛かります。


これに対して、同時廃止事件の場合には、換価・配当などの手続はありませんから、早期に(早れば3か月程度で)事件は終結します。


さらに、管財事件では、債務者の資産の調査を行うために、債務者宛に届いた郵便物などは破産管財人に転送されてチェックを受けることになりますが、同時廃止事件では、郵便物などの転送は行われません。


ほかにも管財事件と同時廃止事件で異なる点は多数ありますが、債務者にとって最も大きな違いは、やはり初めに挙げた予納金の点でしょう。ただでさえお金のやり繰りに困って破産を申し立てるわけですから、その上予納金を準備するのは簡単なことではありません。ただし、そのような場合でも、一定期間内に予納金に充てる金額を積み立てるよう裁判所から指示される場合などもあり、対応は裁判所によって異なりますので、予め弁護士に相談しておきましょう。


(4) 異時廃止事件

なお、いったん管財事件となって破産管財人が選任されたものの、資産の処分ができなかったりして(例えば不動産に買い手がつかないなど)、債権者に配当するだけの資金が形成されない場合も考えられます。そのような場合には、裁判所は破産手続を終了させる決定を行い、その決定を「異時廃止決定」と言います。


「同時廃止」は手続開始と同時に手続が終了する場合でしたが、この場合には手続開始と同時ではなく異なる時点で(異時)手続が終了するので「異時」廃止と呼ばれるわけです。


設例2で、破産管財人がBさんの自宅を売りに出しても買い手が付かず、今後も買い手が現れる見込みが薄い、生命保険も保険から貸付を受けていたため解約返戻金がないなどという場合には、異時廃止決定がなされる場合もあります。



4.免責手続

管財事件、同時廃止事件、異時廃止事件のいずれの場合も、破産手続後に免責に関する手続が行われます。先ほど説明したとおり、免責とは債務者を債務から解放することで、裁判所が債務者に対して免責許可決定を行うと、債務者は債務を支払う法的義務がなくなります。債務者としては、この免責許可決定をもらうために破産の申立をするわけですから、大変重要な決定といえます。


ただ、債務者は必ず免責許可決定をもらえるわけではありません。破産法は、免責が認められない一定の場合を定めており(免責不許可事由、破産法252条1項)、債務者にこれに当たる一定の事情があると、免責が許可されない場合があるのです。


免責不許可事由には様々なものがありますが、以下に代表的なものを分かりやすい表現にして挙げておきます。


①浪費、ギャンブルなどによって債務が生じたこと

②経済的に破たんした状態にあるのに債権者に虚偽を述べて借り入れなどをしたこと

③破産手続において裁判所に虚偽の説明をしたり、虚偽の債権者名簿を提出したりしたこと

④特定の債権者にのみ返済期限前に返済をしたこと

⑤以前に免責許可決定をもらってから7年経過していないこと

 

せっかく破産の申立をしても免責されないのでは破産をした意味がありませんので、破産の申立をしようとする場合にこのような免責不許可事由に当たる事情があるときは、事前に弁護士に十分相談をしておく必要があります。これらの免責不許可事由があっても、裁判所は裁量により免責許可決定をすることもあります(「裁量免責」)ので、破産手続に通じた弁護士に見通しを相談し、破産の申立をするか、個人再生などの他の債務整理手続に方針を変えるかについて決めるのがよいでしょう。


設例1のAさんは、ゲームに課金したことから借金を作っていますから、浪費に当たると扱われる可能性が高いでしょう。


また、破産手続の結果免責許可決定をもらうと7年間は再度の免責は認められません。Aさんは21歳と大変若く、今後どのような事情で再度負債を負うか予想できませんから、できれば破産は避けたいところです。


Aさんとしては、弁護士によく事情を説明して相談し、破産、個人再生、任意整理などのうち、どの方針を選択するかをあらためて検討すべきでしょう。



5.まとめ

以上に破産手続を簡単に説明しましたが、実際の破産の申立はケースごとに様々な事情があり、本当に破産するのがよいのかどうかを形式的に判断することはできません。


例えば、管財事件として扱われるのはどの程度の資産がある場合かの基準や予納金の額は裁判所によって異なりますし、免責不許可事由に当たるかどうかの判断や、免責不許可事由に当たるとしても裁量で免責が許可されるケースかどうかの判断なども具体的な事情によって左右されます。また、設例1のAさんについて述べたように、人によってはできれば破産は避けた方がよいケースもあります。


このような具体的な判断は、弁護士、特に破産や債務整理手続に通じた弁護士でないと適切に行えませんから、破産の申立を検討する場合には、必ず早期に弁護士に相談することをお勧めします。



6.破産をご検討の方は広島の田中法律事務所まで

上記に見てきたように、(自己)破産を含む債務整理を検討される場合は、債務整理に強い弁護士に相談すべきです。


田中法律事務所では、破産を含み、個人再生、任意整理など、債務整理の実績がございます。地元広島県広島市を中心に、東広島市、呉市、廿日市市、三次市、福山市など、広島県内に限らずお問い合わせをお受けしております。


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